## アリストテレスの詩学の話法
### 1. 定義と分類による論理展開 ###
アリストテレスは、『詩学』の中で、詩の構成要素や種類、その効果などを、定義と分類を用いて論理的に展開していきます。
例えば、悲劇を「その筋による浄化作用をもつ模倣」と定義した後、悲劇の六つの構成要素(mythos(筋)、ethos(性格)、dianoia(思想)、lexis(言葉)、melos(音楽)、opsis(視覚効果))を挙げ、それぞれについて詳細に論じています。
また、詩の種類を、模倣の対象、模倣の手段、模倣の様式の三つの観点から分類し、それぞれの特徴を明確にしています。
### 2. 豊富な具体例 ###
アリストテレスは、抽象的な議論を展開するだけでなく、ギリシャ悲劇や叙事詩などから豊富な具体例を挙げながら、自身の主張を分かりやすく説明しています。
例えば、悲劇の筋の構成要素として、ペリペテイア(急転)やアナグノーリシス(認識)を挙げ、ソポクレスの『オイディプス王』などを例に挙げながら、その効果を具体的に解説しています。
このように、具体的な作品を分析することで、読者はアリストテレスの理論をより深く理解することができます。
### 3. 対話形式による考察 ###
『詩学』では、断定的な表現を用いるだけでなく、しばしば疑問を投げかけたり、異なる意見を紹介したりしながら、対話形式で考察を進めていく場面が見られます。
例えば、悲劇の主人公について論じる際に、「善良な人物が不幸になるのは見ていて耐えられない」という意見を紹介した上で、その意見の問題点を指摘し、悲劇の主人公に求められる条件を改めて提示しています。
このような対話形式の論述は、読者に批判的な思考を促し、アリストテレスの思想をより多角的に理解させる効果を持っています。