## アリストテレスの自然学の構成
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第1巻
自然学の課題と方法について論じます。自然学は、運動と変化の原因を探求する学問として位置づけられます。アリストテレスは、自然的なものとそうでないものを区別し、自然的なものはそれ自身の内に運動と変化の原理を持つものと定義します。
彼は、初期の哲学者たちの説、特にミレトス学派やエレア学派の思想を批判的に検討します。タレス、アナクシマンドロス、アナクシメネスといったミレトス学派が万物に共通する始原(アルケー)を想定したのに対し、アリストテレスは複数の原理を認め、始原を物質的なものだけでなく、形相や目的因にも求めました。また、パルメニデスやゼノンのように運動や変化を否定する説に対しては、感覚的経験を重視し、運動の実在性を主張します。
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第2巻
自然学における基本的な概念である、自然、原因、偶然、必然などを考察します。アリストテレスは、自然を「それ自身の中に運動変化の原理を持つもの」と定義し、自然的なものの運動は、そのものの内部に存在する目的によって説明されるとしました。
また、彼は物事の原因を、質料因、形相因、作用因、目的因の四つに分類しました。この四原因説は、アリストテレス哲学の根幹をなす重要な概念であり、自然現象のみならず、あらゆる事物の生成変化の説明に用いられます。さらに、偶然と必然についても論じ、自然現象におけるそれらの役割を考察します。
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第3巻
運動の概念を詳細に分析します。アリストテレスは、運動を「可能性態にあるものが、現実態に移行すること」と定義し、場所の移動、質の変化、量の増減、生成消滅の四種類に分類します。
彼は、運動には必ず動かすものと動かされるものがあると主張し、運動を引き起こすものが必ずしも接触している必要はないとし、遠隔作用の可能性も示唆します。
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第4巻
場所、時間、連続性といった概念を考察します。アリストテレスにとって、場所は物体が占める空間ではなく、物体を取り囲むものの内面と定義されます。時間は運動に付随するものであり、「運動の前後を数えるもの」と定義されます。連続性については、分割不可能な点ではなく、常に潜在的に分割可能なものとして捉えられます。
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第5巻
運動の種類についてさらに詳しく論じます。自然運動と強制運動を区別し、自然運動は物体の本性に由来する運動であり、強制運動は外部からの作用によって生じる運動とされます。
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第6巻
運動の連続性と無限性に関する問題を扱います。アリストテレスは、運動は時間的に無限に続くことはできないと主張し、また、無限の速さで動くものは存在しないと論じます。
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第7巻
再び運動の第一原因について論じ、不動の動者を導入します。不動の動者は、自身は運動しないが、他のすべての運動の原因となる存在として位置づけられ、アリストテレスの形而上学において重要な概念となります。
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第8巻
永遠運動の可能性について論じます。アリストテレスは、天上界の運動は永遠に続くとし、その根拠として不動の動者の存在を挙げます。