## アリストテレスの自然学の力
自然学における「力」の位置づけ
アリストテレスにとって、「自然学」とは、生成消滅する事物についての学問であり、その考察の中心には常に「運動」がありました。彼は、運動を「可能性から現実性への移行」と捉え、自然物におけるこの運動の原因となる原理として「自然」と「力」を挙げます。
「自然」と「力」の区別
アリストテレスは、「自然」を内部に備わった運動と静止の原理と定義し、例えば、石が落下するのは、その石を構成する土元素がその「自然本性」として中心に向かう運動を持つためだと説明しました。一方、「力」は、外部から作用して運動を引き起こす原因とされ、例えば、人が石を投げる場合、石の運動は石の外にある人の「力」によって説明されます。
四種類の原因と「力」
アリストテレスは、物事の原因を「質料因」「形相因」「動力因」「目的因」の四つに分類しました。「力」は、このうち「動力因」に該当し、変化の第一の原因として位置づけられます。つまり、「力」は、可能性の状態にあるものを現実の状態へと移行させる、運動の直接的な源泉と見なされたのです。
様々な「力」
アリストテレスは、「力」を単一の概念としてではなく、多様な形で現れるものとして捉えていました。彼は、物体を押し出す、引っ張るといった「接触力」だけでなく、磁石が鉄を引き寄せる力のような「遠隔力」も認めています。また、生物の成長や感覚作用なども、それぞれ固有の「力」によるものと考えられていました。
「力」の分析
アリストテレスは、「力」を「作用するもの」と「作用されるもの」の関係において分析しました。彼は、あらゆる運動には、運動を引き起こす「能動的な力」と、運動を受ける「受動的な力」の両方が必要であると考えたのです。例えば、火が物を熱するのは、火の中に「熱する力」があり、同時に物側に「熱せられる力」が存在するためだと説明されました。