アリストテレスの弁論術の関連著作
キケロ「弁論家について」
古代ローマの雄弁家、政治家であったキケロは、プラトンやアリストテレスの著作を研究し、ギリシアの修辞学をローマに導入した人物として知られます。彼の代表作「弁論家について」は、理想の弁論家を育成するための教育プログラムを提示した対話篇であり、アリストテレスの弁論術の影響を強く受けています。
キケロは本書の中で、弁論家に必要な資質として、優れた弁舌、論理的思考力、幅広い教養、そして道徳的な高潔さを挙げ、アリストテレスの考えを継承しています。しかし、アリストテレスが重視した論理的証明に加え、キケロは感情に訴えかけるパトスの重要性を強調し、聴衆を魅了する華麗な弁舌術を重視しました。これは、ローマ社会における弁論の役割や聴衆の性質を考慮した上での独自の解釈と言えます。
クインティリアヌス「弁論術教程」
ローマ帝国時代の修辞学者クインティリアヌスは、12年の歳月をかけて執筆した「弁論術教程」の中で、幼少期から青年期までの体系的な教育プログラムを提唱しました。本書は、アリストテレスの弁論術を基盤としつつ、キケロやその他のギリシア・ローマの修辞学説を総合的に網羅した、古代ローマ修辞学の集大成と評されています。
クインティリアヌスは、優れた弁論家であると同時に道徳的な模範となる人物の育成を目指し、倫理教育の重要性を説きました。また、彼は具体的な演習方法や歴史上の名演説の分析などを豊富に盛り込み、実践的な弁論術の教科書としての価値を高めています。