## アウグスティヌスの神の国の構成
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第1部
第1部では、まずローマ帝国の衰退とキリスト教の関係について論じます。当時のローマでは、キリスト教がローマの伝統的な多神教を否定したためにローマの怒りを買い、その結果としてローマが滅んだという考え方が一部で信じられていました。アウグスティヌスはこの考えに真っ向から反論し、キリスト教はむしろ国家の道徳を改善することで国家の安定に貢献すると主張します。
彼はローマ帝国の繁栄と衰退は歴史の必然的なサイクルであるとし、キリスト教はローマの没落の原因ではなく、むしろ苦難の中で人々に希望を与えるものだと説きます。また、ローマ帝国の繁栄は、正義や節制といった美徳によって支えられてきたことを指摘し、真の幸福は地上の国家ではなく、神の国においてのみ実現されると主張します。
さらに、アウグスティヌスは異教の哲学者たちが主張する幸福論も批判します。彼は、人間の欲望は無限であり、それを満たすことは不可能であると指摘し、真の幸福は神への愛と隣人愛によってのみ達成されると主張します。
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第2部
第2部では、歴史の始まりから最後の審判までの歴史観を通して、神の国と地上の国の二つの都市の対立と発展を対比しながら描きます。神の国は、神を愛し、神の意志に従って生きる人々の集まりであり、地上の国は、自己愛と物質的な欲望によって動かされる人々の集まりです。
アウグスティヌスは、この二つの都市は歴史を通じて常に存在し、互いに影響を及ぼし合ってきたと説明します。そして、人間の堕落によってこの二つの都市の対立が始まり、アベルとカイン、ノアの大洪水、バベルの塔などの旧約聖書の物語を例に挙げながら、この対立の歴史を辿っていきます。
そして、イエス・キリストの出現によって、神の国は新しい段階に入ります。キリストの贖罪によって、人間は罪から解放され、神の国に参加することが可能になりました。しかし、地上の国も依然として存在し続け、神の国と対立します。
最終的に、最後の審判において神の国は勝利し、地上の国は滅びます。そして、神の国は永遠の幸福を享受し、地上の国は永遠の刑罰を受けるとアウグスティヌスは述べています。
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構成上の特徴
「神の国」は、全体で22巻からなる大著であり、その構成は一見複雑で難解に見えます。しかし、全体を通して、歴史観と神学が密接に結びついていることが大きな特徴です。
アウグスティヌスは、歴史を神の摂理が実現していく過程として捉え、その中で神の国と地上の国の対立と発展を描き出すことで、読者に神の国の勝利と永遠の命への希望を与えることを目指しました。