時間と自由

『時間と自由』は、フランスの哲学者アンリ・ベルクソンによって1907年に発表された著作です。この本はベルクソンの哲学的思考の核心をなすものであり、時間の本質と自由意志の問題を深く探究しています。ベルクソンは、時間を静的なものではなく、絶えず変化し続ける「純粋持続」として理解します。彼は、時間を数学的な線として捉えるのではなく、質的な経験として捉えるべきだと主張します。

本書では、物理的な時間と心理的な時間の区別を導入し、後者を「内的持続」と呼びます。ベルクソンによれば、内的持続は私たちの意識の流れであり、過去と現在が互いに絡み合いながら展開するダイナミックな過程です。この観点から、彼は因果律や決定論が個人の自由意志に与える影響を再考し、真の自由は予測不可能な創造的行為によってのみ実現されると論じます。

『時間と自由』は、ベルクソンの思想の入門書としても位置づけられ、彼の後の作品における多くの概念の基礎を築きます。彼の独特な時間観と自由に対する洞察は、哲学だけでなく、心理学、物理学、文学など幅広い分野に影響を与え続けています。この著作は、時間と自由意志に関する永遠の問いに新たな光を投げかけるものとして、現代でも読み継がれています。