プラトンの『ティマイオス』は、紀元前4世紀に書かれた哲学的対話です。この作品は、プラトンが残した多くの対話の中でも、宇宙論、自然哲学、人間の存在に関する深遠な思索を展開していることで特に知られています。対話の主な登場人物は、ソクラテス、クリティアス、ティマイオス、ヘルモクラテスの4人であり、彼らは宇宙の起源、宇宙の秩序と構造、そして人間とその魂の本質について議論します。
『ティマイオス』は特に、宇宙がどのようにして創造されたか、そしてその創造者である「造物主」(デミウルゴス)によってどのような目的で設計されたかについての説明で知られています。プラトンは、宇宙が完全な善であり、秩序と調和に満ちたものとして理想化された形で造られたと説明します。これは、可変的な物質世界と永遠不変の形相(イデア)の世界との関係を解明する彼の哲学的枠組みに基づいています。
また、『ティマイオス』は人間の魂の構造とその宇宙との関連についても論じています。プラトンは、魂が理性、勇気、欲望という三部分から成り立っているとし、これらが人間行動の基礎を形成すると考えました。この三分法は、プラトンが理想とする正義の概念に深く関わっています。
さらに、この対話は後の西洋哲学や科学に大きな影響を与えました。特に、プラトンの宇宙論は中世のキリスト教神学やルネサンス期の自然哲学において重要な役割を果たしました。『ティマイオス』は、形而上学、倫理学、自然科学の問題を統合したプラトンの思想の集大成とも言える作品であり、彼の哲学を理解する上で欠かせない文献です。