中世の秋

『ヨーハン・ホイジンガの「中世の秋」』は、オランダの歴史家で文化哲学者ヨーハン・ホイジンガによって1919年に出版された著作です。この本は、14世紀から15世紀にかけてのヨーロッパ、特にフランスとネーデルランドの文化と社会の変化を詳細に分析し、中世末期の文化的な性格を探求しています。

ホイジンガは、この時代を「中世の秋」と呼び、社会の変化、人々の生活様式、芸術、思想、宗教など多岐にわたる側面からその特徴を解き明かします。彼は、この時代を特徴づける要素として、形式主義、象徴主義、寓意的表現、そして一種の退廃的な美意識を挙げています。ホイジンガによれば、これらの特徴は、中世末期のヨーロッパ社会が直面していた経済的、社会的、宗教的な危機の反映であり、同時に新たな時代への移行期であるルネサンスへと繋がっていく重要な橋渡しとなっています。

本書は、その洞察力豊かな分析と、当時の文化や社会を生き生きと描写する文体で、歴史学だけでなく、文化研究、美術史、社会学など幅広い分野で高く評価されています。『中世の秋』は、中世ヨーロッパを理解する上で欠かせない古典的名著とされ、今日でも多くの学者や一般読者に読まれ続けています。