響きと怒り

『響きと怒り』は、アメリカの作家ウィリアム・フォークナーによって1929年に出版された小説です。この作品は、フォークナーの代表作の一つであり、アメリカ南部の没落した名家、コンプソン家の衰退を描いています。物語は4つの異なる視点を通して語られ、各章で異なる登場人物が語り手となります。これらの視点は、知的障害を持つベンジー・コンプソン、落ちぶれたハーバード大学卒のクエンティン・コンプソン、家族の黒人使用人ダルシー、そして最も現実的な視点を提供する家族の末子ジェイソン・コンプソンのものです。

この小説は、時間の流れを非線形に捉え、意識の流れという技法を駆使しています。特に、ベンジーの章では時間が前後に跳ぶことで、彼の記憶と感覚がどのように機能しているのかを読者に感じさせます。『響きと怒り』は、家族の絆、名誉、社会的地位の喪失、そして南部の伝統と価値観の変化といったテーマを探求しています。

フォークナーの独特な文体と複雑な構造は、当初は批評家や読者にとって挑戦的であったかもしれませんが、この作品はやがて20世紀アメリカ文学における最も重要な作品の一つと広く認識されるようになりました。『響きと怒り』は、その革新的な手法と深い人間性で、アメリカ文学におけるモダニズムの進化に大きく寄与したと評価されています。