『孤独な大衆』はデイヴィッド・リースマンによって1950年に発表された社会学の古典的な著作です。この本では、リースマンはアメリカ社会がどのようにして伝統指向型から内向型、そして他人指向型へと変化してきたかを検証しています。彼はこれらの性格のタイプを、それぞれの時代や社会的環境に応じた個人の行動、価値観、そして社会への適応の仕方を表すモデルとして提案しています。
伝統指向型の人々は社会的な役割や伝統に従って行動し、内向型の人々は個人の内面や良心に従って行動します。対照的に、他人指向型の人々は周囲の人々の期待や評価によって行動を決定し、自己の価値を他人の反応に依存させます。
リースマンは、特に他人指向型が増加している現代社会において、個人が外部の圧力に流されやすく、本当の意味での自己を見失いがちであることを指摘します。この状況は「孤独な大衆」を生み出し、個人は群衆の中で孤独を感じることになると彼は論じます。リースマンは、このような社会の動向が個人の自由や創造性にどのような影響を与えるか、そしてどうすれば個人はこれらの社会的圧力から自己を保ち、真の自立を達成できるかについて深く考察します。
『孤独な大衆』は、20世紀中葉のアメリカ社会を深く分析した作品として、社会学はもちろん心理学、文化研究など多岐にわたる分野で読み継がれています。リースマンの洞察は、現代社会における個人のアイデンティティや社会的な属する感じ方について考える上で、今なお大いに参考になるものです。