『ハンティントンの文明の衝突』(原題: “The Clash of Civilizations and the Remaking of World Order”)は、サミュエル・P・ハンティントンによって1996年に出版された一冊の書籍で、国際政治の未来についての大胆な予測を提示しています。ハンティントンは、冷戦後の世界秩序が国家間の対立ではなく、文明間の衝突によって特徴づけられると主張します。
この書籍では、ハンティントンが定義する「文明」は、共通の宗教、歴史、言語、文化、価値観を共有する国々の集まりとして説明されます。彼は主に西洋文明、イスラム文明、儒教文明、日本文明、ヒンドゥー文明、スラブ・正教文明、ラテンアメリカ文明の七つの主要な文明を識別し、これらの文明間の相互作用が21世紀の国際政治の主要な動力になると論じています。
ハンティントンは、文明の衝突が最も顕著に現れる地域を「断層線」と呼び、これらの地域での緊張や紛争が他の地域や文明へと波及する可能性があると警告しています。また、西洋の価値観と政治制度が非西洋文明に押し付けられる「西洋化」の過程によって、他の文明との間にさらなる緊張が生じると指摘しています。
『文明の衝突』は、国際関係における新たなパラダイムを提案するとともに、多文化主義やグローバリゼーションの進展に対する批判的な視点を提供しています。ハンティントンの理論は広範な議論を引き起こし、支持者だけでなく多くの批判者も生み出しました。その影響は、政治学、国際関係論、文化研究など多岐にわたる分野で今もなお感じられています。