『木のぼり男爵』(原題:Il barone rampante)は、イタリアの作家イタロ・カルヴィーノによって1957年に発表された小説です。この物語は、18世紀のイタリアを背景にしており、主人公のコジモ・ピオヴァスコ・ディ・ロンドー男爵が12歳のときに家族との口論から家を飛び出し、その後一生を木の上で過ごすという決断をするところから始まります。
『木のぼり男爵』は、成長、自由、そして個人主義に対する探求を描いた作品であり、コジモの人生を通じて人間と自然との関係、社会とのつながり、そして愛と友情の意味を掘り下げています。彼は木の上から世界を観察し、時には戦争に参加し、また科学研究に没頭し、恋に落ちるなど、多様な経験をします。しかし、彼の人生の中心は常に自由への不変の追求と、一見すると非現実的な生活様式の中にも見出される深い人間理解です。
カルヴィーノは、鮮やかなイメージと豊かな想像力でこの物語を紡ぎ出し、読者をコジモの奇想天外な冒険へと誘います。この小説は、カルヴィーノの他の作品と同様に、哲学的な探究と物語の楽しさを見事に融合させています。『木のぼり男爵』は、カルヴィーノの最も愛される作品のひとつであり、現代文学における不朽の名作として広く認識されています。