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饗宴

『饗宴』(きょうえん、ギリシャ語: Συμπόσιον, Symposium)は、古代ギリシャの哲学者プラトンが書いた対話篇の一つであり、愛(エロス)についての考察が展開される作品です。紀元前385年から紀元前370年の間に書かれたとされ、プラトンの中期の作品に位置づけられています。

この対話篇の舞台は、詩人アガトンの勝利祝賀会での饗宴であり、ソクラテスやアリストパネス、アルキビアデスなど、実在したアテナイの知識人たちが登場します。彼らは順番に愛についての演説を行い、愛の本質や愛の目的について様々な視点から議論を展開します。

特に注目されるのが、ソクラテスの演説です。彼は美を知ることを通じて真理への愛、すなわち哲学へと人を導く愛の概念、”ディオティマの階段”を提唱します。これは、肉体的な愛から始まり、徐々に精神的な愛へと昇華していく過程を描いています。

『饗宴』は、プラトンのイデア論や哲学的思考を理解する上で中核となるテキストの一つであり、西洋哲学における愛の理論に深い影響を与えました。また、美学や倫理学、心理学など、幅広い分野においてもその思想は引用され、議論され続けています。

プラトンの対話篇は、直接的な教訓を説くのではなく、登場人物たちの対話を通じて読者自身が考えを深めることを促します。『饗宴』も例外ではなく、愛とは何か、それをどのように理解し、どのように生きるべきかについて、読者に深く思索する機会を提供する作品です。