詩学

アリストテレスの『詩学』は西洋文学批評の基礎を築いたとされる古典的な著作です。紀元前4世紀に書かれたこの作品は、文学、特に叙事詩、悲劇、喜劇の形式と本質を分析し、これらのジャンルが人間の感情や行動をどのように模倣（ミメーシス）するかを探求しています。アリストテレスの考えでは、芸術と文学は人間の経験の模倣であり、特に悲劇は通じて観客が恐怖や同情の感情を経験し、心の浄化（カタルシス）を遂げることができるとされています。

『詩学』では、アリストテレスが悲劇の構造を詳細に分析し、その成功のために必要な要素を明らかにしています。彼は悲劇を構成する六つの部分――筋（プロット）、性格、思想、詞句、音楽、装置――を特定し、その中でも特に筋を最も重要と考えました。彼は、物語が一貫性があり、始まり、中盤、終わりが明確であるべきだと主張しています。

さらに、アリストテレスは悲劇の主人公が一般的に高貴であるが、完璧ではなく、過ち（ハマルティア）によって不幸に陥ると述べています。この過ちによって生じる悲劇的な転落は、観客に深い感動を与え、最終的にはカタルシスをもたらすと彼は信じています。

『詩学』はまた、喜劇や叙事詩についても論じていますが、その焦点は主に悲劇にあります。アリストテレスのこの著作は、その後の西洋の文学理論に深い影響を与え、現代でも文学批評や理論の分野で広く読まれています。文学作品の構造やキャラクター造形、テーマの探求に関心のある読者にとって、『詩学』は貴重な洞察を提供する古典的な資料です。