英雄伝

プルタークの『英雄伝』（または『対比列伝』）は、古代ギリシャとローマの重要な政治家、将軍、そして思想家たちの伝記を集めた作品です。この作品は、プルタークが後期古代、紀元後1世紀から2世紀にかけて著したもので、その独自性と影響力により、西洋文学および歴史学において不朽の地位を占めています。

『英雄伝』は、23組の伝記が対になっており、それぞれのペアは一人のギリシャ人と一人のローマ人から成り立っています。これらの伝記は、主にその人物の道徳的な資質や行動の選択に焦点を当て、彼らの生涯や達成を通じて、倫理的な教訓や人間性の普遍的な側面を探求しています。また、各ペアの後には「対比」と題された短い章があり、2人の英雄の性格や業績を比較し、プルターク自身の見解や評価を述べています。

プルタークの作品は、彼の卓越した語り口と人物描写によって、読者に古代世界の生き生きとしたイメージを提供します。彼は、人物の内面や動機、個性、そして時には瑕疵も繊細に描き出し、歴史上の人物を単なる記録以上のものとして捉えます。このアプローチにより、『英雄伝』は単に歴史書ではなく、人間性を深く探究する哲学的なテクストとしても機能しています。

プルタークの『英雄伝』は、ルネサンス期に再発見され、その後のヨーロッパ文学や思想に大きな影響を与えました。シェイクスピアやモンテーニュなど多くの作家や思想家が、プルタークの人物描写や思想からインスピレーションを受けています。また、この作品は現代においても歴史や倫理学の教材として広く読まれ続けており、古代世界への理解を深めるだけでなく、普遍的な人間の価値や行動の模範を提供しています。