アリストテレスの『ニコマコス倫理学』は、西洋哲学における倫理学の古典的なテキストであり、幸福、徳、人間の目的についての深遠な探求を展開します。紀元前4世紀に書かれたこの作品は、アリストテレスが自身の倫理学の理論を体系的に論じたものであり、彼の長年の友人かつ学生であったニコマコスに献じられています。
『ニコマコス倫理学』は、幸福(エウダイモニア)を最終目的とする生活を探究します。アリストテレスは、幸福は単に快楽の追求ではなく、理性に従って生きることによってのみ実現可能であると主張します。彼によれば、徳は幸福への鍵であり、徳には知性の徳と性格の徳の二種類があります。
アリストテレスは、中庸の概念を用いて、徳は過度でも不足でもない、適切なバランスの状態であると説明します。例えば、勇気は臆病と無謀の間の中庸であり、節制は過度な快楽への陥りやすさと、快楽を全く感じない状態の間の中庸です。
この著作では、友情、自制、公正など、人間関係や社会生活における徳についても詳細に論じられています。アリストテレスは、才能ある個人だけでなく、コミュニティ全体においても徳が重要であると強調し、政治と倫理の密接な関連性を示唆しています。
『ニコマコス倫理学』は、その普遍的なテーマや洞察により、今日においても多くの読者に影響を与え続けています。倫理学、政治哲学、心理学など、幅広い分野で参照されるこのテキストは、人間の行動と幸福について考える上で欠かせない資料です。