モール・フランダース

『モール・フランダース』は、ダニエル・デフォーによって1722年に出版された英国の小説です。完全なタイトルは『モール・フランダースの生涯と冒険』であり、その副題には「彼女の罪と不幸、彼女の悔恨と懺悔」というフレーズも含まれています。この作品は、17世紀のイングランドとアメリカを舞台に、主人公モール・フランダースの波乱に富んだ人生を追いかけます。

モール・フランダースは貧困、裏切り、困難の中でも生き延びるために執拗に戦う女性の姿を描いています。彼女は泥棒、売春婦、そして結婚を繰り返すなど、生き抜くために様々な手段を用います。モールは五度結婚し、その中には自身の兄弟との結婚や、愛する人との再会など、様々なドラマが展開します。彼女の生涯を通じて、絶え間ない生存の闘争と、倫理的・道徳的な問題に直面する姿が描かれます。

デフォーは、この作品を通じて、18世紀初頭の社会の様々な側面を探ります。貧困、犯罪、社会的地位の問題、そして女性の自立といったテーマが、モール・フランダースの物語を通して探求されています。また、デフォーはモールの生涯を、彼女自身の視点から語らせることで、当時としては珍しい女性の自伝的小説の形式をとっています。

『モール・フランダース』は、その生き生きとした物語と、時代を超えたテーマにより、今日でも多くの読者に愛されています。社会的制約の中で自らの運命を切り開くモールの姿は、現代の読者にも共感を呼び起こすでしょう。