マクベス:MBTIが暴く野心の闇と運命の螺旋
シェイクスピアの四大悲劇の一つ、「マクベス」。スコットランドの将軍マクベスが、魔女たちの予言に導かれ、野心に駆られて王を殺害し、王位を簒奪する物語。しかし、罪の意識と恐怖にさいなまれるマクベスと、彼の野望を支えながらも次第に狂気に染まっていくマクベス夫人の姿は、権力と欲望の果てにある破滅を鮮烈に描き出しています。
今回は、MBTIという性格分析ツールを用いて、マクベス夫妻をはじめとする登場人物たちの内面世界に迫り、彼らの行動や関係性を多角的に分析していきます。シェイクスピアファンもMBTIに興味がある人も、きっと「マクベス」への理解を深め、新たな発見に満ちた読書体験を得ることができるでしょう。
1. マクベス: 野心と恐怖の間で揺れる悲劇の英雄 (INFJ)
マクベスは、勇敢な将軍でありながら、魔女たちの予言によって野心に目覚め、破滅へと突き進んでいく悲劇の英雄です。彼の性格は、INFJ(提唱者)と多くの共通点を持っています。INFJは、理想主義的で、強い倫理観と正義感を持っていますが、同時に内向的で、自分の内面世界を深く掘り下げることを好みます。
マクベスが当初は王殺しに躊躇するものの、マクベス夫人の唆しや自身の野心に突き動かされ、罪を犯してしまうのは、彼の持つ理想と現実の葛藤、倫理観と野心のせめぎ合いを象徴していると言えるでしょう。また、INFJは優れた洞察力と未来を見通す力を持つ一方で、自分の理想に固執しすぎるあまり、周囲が見えなくなってしまうこともあります。マクベスが予言に囚われ、恐怖と猜疑心に支配されていく姿は、彼のINFJとしての危うさを示していると言えるでしょう。
**現代社会に置き換えると、マクベスは、高い理想と能力を持ちながらも、権力闘争に巻き込まれ、道を踏み外してしまう政治家や企業経営者かもしれません。**あるいは、自分の信念を貫こうとするあまり、周囲との摩擦を生み、孤立してしまう活動家や芸術家という可能性もあるでしょう。
2. マクベス夫人: 冷徹な野心家で夫を操る黒幕 (INTJ)
マクベス夫人は、夫マクベスの野心を煽り、王殺しへと駆り立てる、冷酷で野心的な女性です。彼女の性格は、INTJ(建築家)の特徴とよく一致します。INTJは、戦略的な思考と独立心が強く、目標達成のために緻密な計画を立て、実行します。
マクベス夫人が夫の弱みにつけ込み、巧みな心理操作で彼を操っていく姿は、INTJらしい知性と戦略性の表れです。彼女は、感情よりも論理を優先し、目的のためには手段を選ばない冷酷さを持っています。しかし、INTJは感情を抑圧する傾向があり、そのストレスが積もり積もると、精神的な不安定さに繋がることがあります。マクベス夫人が罪の意識にさいなまれ、幻覚に苦しむ姿は、彼女が抱える内面の闇を象徴していると言えるでしょう。
現代社会では、マクベス夫人は、冷徹な判断力と戦略性でビジネス界を牽引するCEO、あるいは権謀術数を駆使して政界を操る政治家かもしれません。
マクベスとマクベス夫人は、共に直観(N)と思考(T)を重視するタイプであり、共通の目標に向かって協力できる関係でした。 しかし、マクベスのINFJは内向的で倫理観に葛藤を抱えるのに対し、マクベス夫人のINTJは外向的で、目的達成のためには冷酷になれる点が大きく異なります。この性格の違いが、二人の運命を大きく左右することになります。
3. バンクォー: 忠誠心と運命のいたずらに翻弄される将軍 (ISTP)
バンクォーは、マクベスと共に戦う忠実な将軍ですが、魔女たちから「王の祖先となる」という予言を受け、マクベスに殺害されてしまいます。彼の性格は、ISTP(巨匠)の特徴と合致します。ISTPは、現実的で、行動力に優れ、論理的な思考と冷静な判断力で問題解決に臨みます。
バンクォーが魔女たちの予言に動揺する一方で、マクベスのように野心に駆られることなく、冷静さを保つのは、彼のISTPとしての現実主義と冷静さの表れでしょう。彼は、不必要なリスクを避け、状況に応じて柔軟に対応することを好みます。
現代社会では、バンクォーは、冷静な判断力と行動力で現場を指揮する警察官や消防士、あるいは論理的な思考で問題解決に挑むエンジニアやプログラマーとして活躍しているかもしれません。
4. ダンカン: 温厚で慈悲深い、理想的な君主 (ENFJ)
ダンカンは、スコットランド王として、臣民から慕われる温厚で慈悲深い人物です。彼の性格は、ENFJ(主人公)の特徴とよく一致します。ENFJは、カリスマ性とリーダーシップに溢れ、周囲の人々を鼓舞し、導くことに長けています。
ダンカンがマクベスに厚い信頼を寄せ、彼に惜しみない賞賛を与えるのは、ENFJらしい温かさと人を信じる心の表れです。彼は、理想的な指導者として描かれており、彼の死によってスコットランドは混乱と闇に包まれることになります。
現代社会では、ダンカンは、人々を魅了するカリスマ性とリーダーシップで社会を牽引する政治家や宗教指導者、あるいは生徒たちの才能を引き出す教育者などとして、周囲に良い影響を与えているかもしれません。
ダンカンとマクベスは、どちらも理想主義的な側面を持っていますが、ダンカンのENFJは外向的で、人々を導き、社会に貢献することに喜びを感じるのに対し、マクベスのINFJは内向的で、自分の内面世界を重視し、葛藤を抱えがちです。 この性格の違いが、二人の運命を大きく分けることになります。
5. マルカム: 正義感と決断力で王位を継承する王子 (ENFP)
マルカムは、ダンカンの長男であり、マクベスによって父を殺害された後、イングランドに亡命し、復讐の機会を伺います。彼の性格は、ENFP(広報運動家)の特徴と合致します。ENFPは、自由と正義を愛し、不正や抑圧に対して立ち向かう勇気を持っています。
マルカムがマクベスの tyranny に立ち向かう決意をし、イングランド軍を率いてスコットランドに攻め込むのは、彼のENFPとしての正義感と行動力の表れでしょう。彼は、楽観的で、未来への希望を捨てずに、困難な状況にも立ち向かう強さを持っています。
現代社会では、マルカムは、人権問題や環境問題に取り組む活動家、あるいは不正を告発するジャーナリストとして、社会正義の実現のために奮闘しているかもしれません。
6. マクダフ: 忠誠心と復讐心に燃える戦士 (ISTJ)
マクダフは、ダンカンに忠実な貴族であり、マクベスによって家族を殺害され、復讐を誓います。彼の性格は、ISTJ(検査官)の特徴とよく一致します。ISTJは、責任感と義務感が強く、伝統やルールを重んじます。 また、冷静で、事実を重視する現実主義者でもあります。
マクダフがマクベスの裏切りに憤り、復讐を決意する一方で、冷静に状況を分析し、マクベス打倒のための戦略を練る姿は、彼のISTJとしての冷静さと責任感の表れです。
現代社会に置き換えると、マクダフは、正義感と責任感の強い警察官や軍人、あるいはルールを守り、組織に忠実に貢献する公務員などとして、その能力を発揮しているかもしれません。
7. 魔女たち: 運命を操る謎めいた存在 (ENTP)
3人の魔女は、マクベスに予言を与え、彼の野心と破滅を操る、謎めいた存在です。彼女たちの性格は、ENTP(討論者)と共通点があると考えられます。ENTPは、知的好奇心と想像力が旺盛で、型破りなアイデアや新しい可能性を探求することを好みます。
魔女たちがマクベスに曖昧な予言を与え、彼の運命を翻弄する様は、ENTPの遊び心と人を試すような一面を反映していると言えるでしょう。彼女들은、混沌と変化をもたらす存在であり、マクベスの悲劇を加速させる役割を担っています。
現代社会では、魔女たちは、人々の常識を覆すような斬新なアイデアを生み出すアーティストやクリエイター、あるいは鋭い洞察力で未来を予測する預言者や占い師として、その特異な才能を発揮しているかもしれません。
MBTIが解き放つ「マクベス」の深淵なる世界
MBTIを用いて登場人物たちを分析することで、「マクベス」は単なる権力闘争の物語ではなく、人間の野心と恐怖、罪と罰、そして運命の皮肉を描く、より深遠な作品として立ち現れてきます。それぞれの性格タイプが、彼らの選択や行動にどのように影響を与え、どのような結末へと導いたのか。それを考察することで、私たちは「マクベス」という作品から、人間の本質と運命の不可思議さについて、より深く学ぶことができるでしょう。
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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。