『ホブスンの帝国主義論』は、英国の経済学者ジョン・A・ホブスンによって1902年に発表された著作で、近代帝国主義を経済的観点から分析し、その本質と影響を論じた画期的な作品です。ホブスンは、帝国主義が単なる国家間の政治的野心や軍事的競争の産物ではなく、資本主義経済の内部矛盾に根ざしていると主張しました。彼は、先進国が国内で生じる過剰資本と過剰生産を解消するために新たな市場、原料源、投資先を求めて植民地化を進める過程を帝国主義と定義しました。
ホブスンの分析では、このような経済的動機が帝国主義政策の推進力となり、結果として世界各地で植民地競争が激化し、経済的不平等の拡大、植民地住民の抑圧、そして国際的な緊張と衝突を引き起こすと論じました。また、彼は帝国主義が本国の経済にも必ずしも利益をもたらさず、むしろ多くの場合においてコストが利益を上回ると指摘し、植民地政策の見直しを主張しました。
『ホブスンの帝国主義論』は、マルクス主義やリベラル主義を含む多様な政治経済学の視点から影響を受け、後の帝国主義や植民地主義研究に大きな影響を与えました。特に、レーニンの帝国主義理論においては、ホブスンの分析が重要な基礎となりました。ホブスンの著作は、経済学、国際関係論、歴史学など幅広い分野で参照され、現代においても帝国主義の本質を理解する上で欠かせない一冊となっています。