『神と国家』は、19世紀のロシア出身の革命家であり思想家のミハイル・バクーニンによって書かれた政治哲学の著作です。この書籍は、バクーニンの無政府主義思想を体現しており、宗教、特にキリスト教と国家の権威に対する批判を展開しています。彼は、神と国家という二つの権威が人間の自由と解放に対する最大の障害であると主張します。
バクーニンは、宗教が人間を抑圧するための道具として使われ、国家がその抑圧を実現するための機構として機能すると論じます。彼は、神の概念が人間の自然な自立心と創造力を奪い、人々を従属させることで、権力者がその支配を正当化する手段として用いられていると批判します。また、国家はこの神の意志を執行することを名目に、人々の自由を制限し、個人の自己決定権を侵害すると指摘します。
バクーニンの理論は、神と国家という二つの支配的な権威を完全に否定し、それらに代わる自由で平等な社会の構築を目指します。彼は、人間が自然な状態で自由であり、社会的な束縛や制約から解放されるべきであると主張し、そこから真の社会的進歩と個人の成長が生まれると信じています。
『神と国家』は、バクーニンの思想の核心をなす作品であり、無政府主義や自由思想の文脈で広く読まれ、議論されています。彼のラディカルなアイディアと権威批判は、後世の無政府主義者や自由主義者に大きな影響を与え、政治哲学における重要なテクストとして位置づけられています。