『エウゲニー・オネーギン』は、ロシアの国民的詩人アレクサンドル・プーシキンによって書かれた詩的小説です。この作品は1825年から1832年にかけて書かれ、1833年に出版されました。ロシア文学の金字塔とも評されるこの作品は、ロシア文学における詩的小説の先駆けとして高く評価されています。
物語は、若くして退屈を感じている貴族、エウゲニー・オネーギンを中心に展開します。彼は都会生活に飽き飽きしているところ、遠縁の死により田舎の地所を相続し、そこで新たな生活を始めます。田園地帯での生活は彼にとって新鮮なものでしたが、やがて彼は隣人の若い詩人、ウラジーミル・レンスキーと友情を育み、レンスキーの婚約者オリガとその姉タチアナと出会います。物語の中心は、純粋で情熱的なタチアナがオネーギンに対して抱く一方的な恋愛です。タチアナの情熱的な愛の告白にもかかわらず、オネーギンは彼女の愛を拒みます。後に悲劇的な出来事を通じてオネーギンは彼自身の感情と行動を省みることになります。
『エウゲニー・オネーギン』は、プーシキン自身が開発した特有の韻律形式、「オネーギン詩」と呼ばれる14行の韻律で書かれています。この形式は、ロシア語のリズムと響きを最大限に活かし、情感豊かな詩的表現を可能にしました。作品は、ロシア社会の風俗、人々の生活、そして当時の社会的、文化的な背景を鮮やかに描き出しており、ロシア人の心と魂の深淵を探る作品として、今日でも多くの読者に愛され続けています。