『歴史の終わり』(The End of History and the Last Man)は、フランシス・フクヤマが著した政治哲学の書籍です。この本は1992年に出版され、冷戦終結と共に西側諸国、特にアメリカ合衆国の政治・経済体制である自由民主主義と市場経済が、全世界における最終的な政府形態として勝利したとする、画期的かつ物議を醸すテーゼを提示しました。
フクヤマは、歴史をイデオロギーの進化として捉え、共産主義の崩壊を証拠として、自由民主主義が人類の政治的進化の終点にあたると主張します。彼は、自由民主主義が提供する「承認」の欲求を満たす能力を根拠に、他の政治体制は自由民主主義に比べて劣ると論じます。
書籍では、経済的発展、科学技術の進歩、そして軍事的対立の減少が、世界中で自由民主主義の普及を促進すると論じられています。しかし、同時にフクヤマは、この「歴史の終わり」が人類の精神的な満足や最終的な幸福を保障するわけではないとも警告しています。
『歴史の終わり』は、その後の国際政治学や政治哲学の議論に大きな影響を与え、賛否両論を呼びました。一部の批評家は、フクヤマのテーゼが過度に楽観的で、歴史の多様性や未来の不確実性を過小評価していると指摘しました。他方で、自由民主主義の普遍性と優位性を論じる上で重要な参照点として、この書籍は高く評価されています。