ユークリッドの『原論』(ギリシャ語: Στοιχεῖα, ストイケイア)は、紀元前300年頃に古代ギリシャの数学者ユークリッドによって著された数学に関する著作です。この著作は、古代から現代に至るまで最も影響力のある数学のテキストとして広く認識されています。『原論』は、幾何学の原理と論理的な証明方法を体系的に展開した13巻からなる書籍で、幾何学だけでなく数論や立体幾何など、さまざまな数学の分野にも及びます。
『原論』の特徴はその厳密な論理構造にあります。全体を通して、定義、公準(自明な前提)、公理(基本的な原理)、命題(証明されるべき事柄)といった形式を取り、各命題は前の命題や公準に基づいて論理的に証明されていきます。この方法論は、後の科学や哲学における論理的推論のモデルとしても影響を与えました。
その内容は、第1巻から第6巻までが平面幾何学を扱い、三角形、平行線、多角形、円などの性質に関する基本的な命題や定理が証明されています。第7巻から第10巻までは数論に関する内容で、最大公約数や素数、比などが扱われます。最後の第11巻から第13巻では、立体幾何学に焦点を当て、多面体や円柱、円錐、球などの性質が解説されています。
『原論』は、その後の数千年にわたり教育や研究に使用され、多くの言語に翻訳されてきました。ユークリッドの論理的で体系的なアプローチは、数学的思考の基礎を築いたと考えられており、現代でもその価値を失っていません。