『判断力批判』(Kritik der Urteilskraft)は、ドイツの哲学者イマヌエル・カントによって1790年に発表された著作です。この書籍は、カントの批判哲学における三部作の最終篇にあたり、『純粋理性批判』(1781年)、『実践理性批判』(1788年)に続くものです。『判断力批判』では、カントは純粋理性(認識の領域)と実践理性(道徳の領域)の間をつなぐ橋渡しとして、判断力の問題を扱います。
この書籍は主に二部構成であり、「美的判断力批判」と「目的論的判断力批判」から成り立っています。美的判断力批判では、カントは美の判断がどのように主観的かつ普遍的であるかを探究し、美術作品や自然の美しさに対する人々の反応を分析します。目的論的判断力批判では、生命現象や自然界の秩序を理解するための目的論的(目的を持っているように見える)視点の重要性を論じています。
カントにとって、判断力は人間の精神活動における重要な能力であり、自然界と道徳法則の両方を理解するための基礎を提供します。彼は、美的判断や目的論的判断が純粋な主観性を超えて普遍的な合意に到達する方法を探求し、これらの判断が人間の認識能力と道徳性をどのように統合するかを明らかにしようとしました。
『判断力批判』は、カントの哲学の集大成とも言える作品であり、美学、道徳哲学、自然哲学の根底にある基本原理を統一的な枠組みで理解しようとする野心的な試みです。その影響は、哲学はもとより、美学、芸術批評、生物学などの多様な分野に及んでいます。