ユスティニアヌスのローマ法大全(Corpus Juris Civilis)は、古代ローマ法を体系化した歴史的な文書群であり、東ローマ帝国の皇帝ユスティニアヌス1世の指示によって6世紀(528年から534年にかけて)に編纂されました。この大法典は、古代ローマの法的遺産を保存し、統合することを目的としており、ローマ法学の基礎を形成しました。ユスティニアヌス法大全は、その後のヨーロッパの法体系、特に民法に深い影響を及ぼしました。
ユスティニアヌスの法大全は主に四つの部分から構成されています。第一に「法学教程」(Institutiones)があり、これは法学の基礎教育のために用いられた教科書です。第二に「法律文献集」(DigestaまたはPandectae)があり、これは過去の法学者たちによる意見や判例の集成で、ローマ法の理論と実践の精華が詰まっています。第三に「新法令集」(Codex Justinianus)があり、ユスティニアヌス統治下の新しい法令や既存の法律の改正をまとめたものです。最後に「新刊行物」(Novellae Constitutiones)があり、法大全完成後に発布された新しい法律を集めた部分です。
ユスティニアヌスのローマ法大全は、中世ヨーロッパの大学での法学教育において中心的な役割を果たし、近代法の発展にも影響を与え続けています。この法大全により、古代ローマの法理念と法制度が後世に伝えられ、西洋法の基礎となる重要な文献として位置づけられています。