定義

作る手間だけが下がり、確かめる手間が受け手に引っ越した。

部下から届いた企画書は、体裁が整い誤字もないのに、読み終えると「で、どうすればいいのか」が分からない。数字の根拠がなく、肝心の判断が書かれていない。表面が立派なせいで、受け手は全文を精読し、根拠を確かめ、場合によっては作り直すことになる。作る手間を送り手が節約し、確かめる手間を受け手が支払うのです。

AIは文書を「作る手間」をほぼゼロにしましたが、数字や実情を「確かめる手間」は一円も安くなっていません。確かめを省いたまま送信する人が現れると、その確認作業は消えるのではなく、受け手の机に引っ越します。送り手が五分で作った文書に、受け手が二時間払う。正体はAIの失敗ではなく、この確認の引っ越しです。

受け取ったら、感想ではなく質問を三つ返します。数字の根拠、決めた前提との整合、本人の判断。答えるには送り手が中身を確かめるしかありません。自分が出す側では、固有名詞と数字をなぞり、依頼文と突き合わせ、自分の一行を足す三点検品を。下書きなら「AI下書き・数字未確認」と宣言し、宣言した人を責めないことです。

本書で扱う内容

14節
  1. 読めるのに、使えない——新しい種類の困った資料
  2. ワークスロップとは何か——約4割が受け取っている
  3. なぜ増えるのか——「確認の引っ越し」という正体
  4. たたき台とスロップは、違う——分かれ目は宣言と検品
  5. 見分け方——五つのサイン
  6. 受け取ったら——感想ではなく、質問で返す
  7. 送り手にならない——出す前の三点検品
  8. 上司の視点——スロップは、部下だけの責任ではない
  9. 依頼の三行——目的・読み手・判断基準
  10. チームのルール——「AIで作った」と言える空気
  11. 資料だけではない——会議とメールのスロップ
  12. ワークスロップの、よくある間違い
  13. 明日、やる三つのこと
  14. まるごと実践——ある企画課長の一週間