定義
現状は、座席に座っているだけで競争に有利になる。
半額のプランがあると知りながら、10年同じ携帯会社のまま。同じ中身の選択肢でも「いま持っているもの」と示されるだけで選ばれやすくなることが、実験で繰り返し確かめられています。現状という座席に座っているだけで、その選択肢は競争に有利になる。この癖が現状維持バイアスです。
根っこには、動いて出た損は太字で、動かずに出た損は薄字で書かれるという、後悔の帳簿の偏りがあります。加えて、脳は一度うまくいった選択を「いつもの」として自動再生する省エネ設計を持ち、世の中の初期設定は多くの場合、設計者の利益のために選ばれている。決意が毎年敗れるのは、そのためです。
この癖は意志ではなく、仕組みで破ります。年に一度の点検日をカレンダーの行事にする。現状をいったん棚から下ろし、候補の一つとして同じ厳しさで採点する。一部だけ、並行で、戻せる形で小さく試す。この三つが道具です。点検を通った上での現状維持は惰性ではなく、選び直された現役です。
この概念の論点
14節- なぜ、10年同じ携帯会社なのか
- 動いた後悔は、動かない後悔より痛い
- 「いつもの」は、脳の省エネである
- 初期設定は、世界最強の営業マンである
- 切り替えの手間は、実際より大きく見える
- 自動更新は、あなたの忘却で稼いでいる
- 見直しは、決断ではなく行事にする
- 現状を、いったん棚から下ろして比べる
- 小さく試すと、体の抵抗が消える
- 会社の「前例どおり」を、動かす
- 変えないのが、正解のときもある
- 現状維持バイアスの、よくある間違い
- 明日、やる三つのこと
- まるごと実践——ある個人事業主の一週間