定義
人が弾き返すのは内容ではなく、決める座席を奪われることだ。
「押すな」と書かれたボタンほど押したくなり、「今すぐ買え」と迫る広告ほど買う気が失せる。禁止や命令で選択肢が奪われた瞬間、奪われたという理由だけで、その選択肢は急に輝いて見え始めます。これは天邪鬼な一部の人の性格ではなく、人間全員に標準装備された反射で、売り場でも家庭でも毎日発火しています。
提案を受けた心の中では、「得か損か」という内容の審査と、「私のハンドルに触っているのは誰だ」という主権の審査が同時に走ります。そして主権の審査の方が速くて強い。正論が通じない場面の多くは、内容が負けたのではなく、伝え方が決める座席を踏んだのです。勉強しろと言われた子が拒否しているのは、勉強ではありません。
対策は、命令を選択肢と情報に変えることです。「宿題をやりなさい」は「夕食の前に済ませる? それとも後?」へ、「早く寝なさい」は「明日は6時起きだよ」へ。商売では、買わない自由を保証した店から人は買います。退路を開けて見せることは、商品への自信の開示として読まれ、防衛を検討に変えます。
この概念の論点
14節- なぜ「押すな」と言われると、押したくなるのか
- 反発は、天邪鬼ではなく防衛である
- 売り込みが、買う気を消す
- 「残りわずか」は効くのに、「今すぐ買え」が効かない理由
- 禁止は、最強の宣伝になる
- 「勉強しなさい」が、勉強嫌いを作る
- 対策その一——選ばせると、人は動く
- 対策その二——命令を、情報に変える
- 退路を見せると、人は進む
- 自分の中の、反発と付き合う
- 反発を「わざと使う」ことの、危うさ
- 心理的リアクタンスの、よくある間違い
- 明日、やる三つのこと
- まるごと実践——ある学習塾の一週間