『アブサロム、アブサロム!』は、1936年に出版されたウィリアム・フォークナーの代表作の一つであり、アメリカ文学の古典とされています。この小説は、アメリカ南部の架空のヨクナパトーファ郡を舞台に展開し、南北戦争前後の時代を背景に、サトペン一族の衰退と崩壊を描き出します。
物語は、トーマス・サトペンという野心的な男が自らの王国を築こうとするところから始まります。サトペンは、貧しい家庭に生まれながらも、自分の地位と富を築くためには手段を選ばない強烈な意志を持っています。彼は大邸宅を建て、土地を広げ、名門の女性と結婚し、子供たちをもうけますが、彼の野心はやがて彼自身と彼の家族を破滅へと導きます。
小説は、複数の語り手を通じて物語が展開され、読者は様々な視点から物語を追います。この技法により、フォークナーは人間の記憶と語りの不確かさを探求し、真実は一つではなく、多くの層からなるものだと示唆します。また、人種差別、名誉、復讐、愛憎などの普遍的なテーマを通じて、アメリカ南部の文化と歴史の複雑さを深く掘り下げます。
『アブサロム、アブサロム!』は、フォークナーの独特な文体と深いテーマで、文学的な評価が高く、アメリカ文学の中で重要な地位を占めています。読者にとっては挑戦的な作品かもしれませんが、アメリカ南部の過去と人間の本質についての洞察を求める者には、非常に報われる読書体験となるでしょう。