ピグーの厚生経済学の対称性
**厚生経済学における対称性の概念**
ピグーの厚生経済学において、対称性は幾つかの側面で重要な役割を果たします。まず、ピグーは個人間の効用の比較可能性を前提としており、これはある人の厚生の変化が別の人の厚生の変化と同じように考慮されるべきであることを意味します。これは、すべての個人の効用が社会全体の厚生に等しく寄与するという対称的な見方を反映しています。
**所得と効用の対称性**
ピグーは、所得の限界効用逓減の法則を主張しました。これは、所得が増加するにつれて、追加的な所得から得られる効用は減少していくというものです。この法則は、富裕層から貧困層への所得移転が社会全体の厚生を増加させる可能性があるという考え方を支持するために用いられます。なぜなら、貧困層にとっての追加的な所得の効用は、富裕層にとっての効用の損失よりも大きいからです。
**外部経済効果と対称性**
ピグーの厚生経済学は、外部経済効果、つまり市場取引が第三者に与える影響を分析する際にも対称性を重視します。たとえば、工場の排出による汚染は、周辺住民に健康被害などの負の外部経済効果をもたらします。ピグーは、このような外部経済効果を市場の失敗とみなし、政府による介入、たとえば課税などによって是正する必要があると主張しました。この考え方は、加害者と被害者の両方の厚生を対等に考慮する必要があるという対称性を前提としています。
**ピグーの対称性の限界**
ピグーの厚生経済学における対称性の概念は、その後の経済学者によって批判されてきました。特に、個人間の効用の比較可能性に対する批判は根強く、現代の経済学では、効用は主観的なものであり、客観的に測定することはできないという見方が一般的です。
上記の説明は、ピグーの厚生経済学における対称性の概念を理解するための基礎を提供することを目的としています。