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ニーブールのローマ史の対称性

## ニーブールのローマ史の対称性

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ニーブールの意図した構成

テオドール・モムゼンがニーブールの『ローマ史』を「構成の妙が光る作品」と評したように、ニーブールはこの作品において明確な構成意図を持って執筆しました。 彼が意図したのは、ローマ史をある種の演劇のように三部構成で描くことでした。

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第一部:王政期から第一次ポエニ戦争まで

第一部はローマの誕生から第一次ポエニ戦争までを扱います。 この時期はローマ建国という劇的な幕開けに始まり、王制の崩壊、共和制の成立、そして周辺諸民族との抗争を経て、イタリア半島統一という最初のクライマックスを迎えます。 ニーブールはこの部分を、ローマという国家の誕生と成長、そしてその強靭さを示す物語として描いています。

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第二部:第一次ポエニ戦争からグラックス兄弟の改革まで

第二部は第一次ポエニ戦争後、ローマが地中海世界に勢力を拡大していく過程を描きます。 カルタゴとの死闘やマケドニア、シリアといったヘレニズム諸国との戦いを経て、ローマは名実ともに地中海世界の覇権国家となります。 しかし、ニーブールはこの輝かしい勝利の裏で、ローマ社会内部に深刻な矛盾と亀裂が生じていることを指摘しています。 領土の拡大は、ラティフンディウムの増大と中小農民の没落、奴隷制の拡大といった社会問題を引き起こし、ローマの共和政は大きな転換期を迎えます。

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第三部:グラックス兄弟の改革から帝政の開始まで

第三部はグラックス兄弟の改革に始まり、マリウスとスッラの内戦、カエサルの台頭と暗殺、そしてオクタウィアヌスによる帝政の開始までを描きます。 ニーブールはこの時代を、共和政の理想と現実の矛盾が激化し、最終的に崩壊に至る悲劇的な物語として描いています。 かつては自由と平等を理想としていたローマが、内乱と権力闘争の果てに、帝政という新しい支配体制を受け入れるまでの過程が、ニーブールの冷徹な筆致によって描き出されています。

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未完に終わった作品

ニーブールは『ローマ史』を構想通りに三部構成で完結させることを目指していました。 しかし、彼は第三部の途中で病に倒れ、志半ばでこの世を去りました。 そのため、『ローマ史』は帝政の開始までで終わっており、共和政末期の混乱を収拾し、新たな時代を切り開いたアウグストゥスの治世については描かれていません。

これらの要素が、『ローマ史』における対称性に関わる記述です。

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