## アウグスティヌスの神の国の対称性
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二つの愛、二つの都市
アウグスティヌスは、「神の国」において、人間の歴史を二つの都市、すなわち「神の国」と「地の国」の対比を通して描いています。この二つの都市は、それぞれ異なる愛を起源とし、異なる目的と終末に向かって歩みます。
「地の国」は自己愛に基づき、自己の栄光と快楽を追求します。それは、アダムの罪によって始まった、神から離反した人間の欲望と驕りを象徴しています。一方、「神の国」は神への愛を基盤とし、永遠の幸福を求めます。それは、アベルに代表されるように、神の意志に従い、隣人を愛する人々によって構成されます。
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歴史における対立と交錯
アウグスティヌスは、この二つの都市が歴史の中で常に並行して存在し、対立と交錯を繰り返すと説明します。カインとアベルの物語に始まり、ローマ帝国の興亡など、歴史上の様々な出来事は、この二つの都市の対立とせめぎ合いとして解釈されます。
ただし、この二つの都市は、完全に分離しているわけではありません。現実の世界には、「神の国」と「地の国」の両方に属する人々が混在しています。アウグスティヌス自身も、かつては「地の国」に属していましたが、回心によって「神の国」に加わりました。
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時間と永遠の対比
「神の国」と「地の国」の対比は、時間と永遠の対比とも重なります。「地の国」は、この世の栄華や権力など、一時的なものに執着します。しかし、それらはすべて、時の流れとともに衰退し、滅びゆく運命にあります。
一方、「神の国」は、永遠不滅の神を愛し、永遠の生命を求めます。たとえ、この世で苦難や迫害に遭うことがあっても、それは永遠の栄光へと至るための試練とみなされます。