## ホッファーの大衆運動の価値
ホッファーの主張と現代社会への示唆
エーリッヒ・フロムの序文とともに1951年に出版された「大衆運動」は、歴史上の様々な大衆運動を分析し、その共通点と相違点を浮き彫りにしました。ホッファーは、ナチス・ドイツやソビエト連邦といった全体主義体制の台頭を目の当たりにし、大衆運動が孕む危険性と可能性について考察しました。
大衆運動の特徴：不満、希望、そして新しい秩序への渇望
ホッファーは、大衆運動を特徴づける要素として、人々の間に蔓延する不満、輝かしい未来への希望、そして既存の秩序に取って代わる新しい秩序への渇望を挙げました。彼は、社会的な変動期や経済的な不安定期に、人々が現状に不満を抱き、より良い未来を夢見て、大衆運動に引き寄せられると論じました。
大衆運動の類型：積極的変革型と逃避型
ホッファーは大衆運動を、積極的に社会を変革しようとする「積極的変革型」と、現実逃避的に別の世界に安住を求める「逃避型」の2つに分類しました。積極的変革型の運動は、具体的な政治的・社会的な目標を掲げ、その実現に向けて行動を起こします。一方、逃避型は、現実社会からの逃避を求め、宗教や神秘主義、あるいはカルト的な集団に傾倒します。
大衆運動の指導者：大言壮語とカリスマ性
ホッファーは、大衆運動の指導者が、人々の不満や不安につけ込み、大言壮語とカリスマ性によって大衆を扇動すると指摘しました。彼らは、単純化されたスローガンや感情的なレトリックを駆使し、人々に共通の敵を設定することで、集団的な一体感を醸成します。
大衆運動の功罪：建設と破壊の両面
ホッファーは、大衆運動が社会に与える影響は一様ではなく、建設的な側面と破壊的な側面の両方を持ち合わせているとしました。彼は、大衆運動が、社会の不平等や不正を是正し、新しい価値観や制度を創造する原動力となり得ると認めつつも、同時に、暴力や抑圧、そして全体主義体制の台頭を招く危険性も孕んでいると警告しました。