ショーペンハウアーの女について／倫理についての価値

ショーペンハウアーは、その著作の中で女性について多くの記述を残しており、それらはしばしばミソジニー（女性蔑視）として批判されてきました。彼は女性の知性や理性は男性に劣ると考え、女性を「第二の性」と位置付け、主に男性の性的欲望の対象として捉えていました。

彼の女性観は、当時のヨーロッパ社会に蔓延していた家父長制的な価値観や、古代ギリシャ哲学、特にアリストテレスの影響を強く受けています。しかし、彼の女性に対する見解は、現代の視点からは性差別的で偏ったものと捉えられがちです。

ショーペンハウアーの倫理観の中心には、「同情」の概念があります。彼は、人間は本来、自己保存の本能に突き動かされた利己的な存在であると同時に、他者の苦しみを我がことのように感じ取ることができる能力、すなわち「同情」を持っていると考えました。

ショーペンハウアーは、この「同情」こそが、利己主義を超えて、真に倫理的な行動を可能にする根源であると主張しました。彼はまた、仏教やインド哲学にも関心を寄せ、その思想から影響を受けて、禁欲や自己犠牲を倫理的に価値のある行為として高く評価しました。

彼の倫理観は、当時のヨーロッパ思想界において主流であった、理性や義務を重視する啓蒙主義的な倫理観とは一線を画すものでした。しかし、彼の「同情」に基づく倫理思想は、現代においてもなお、人間の道徳性の本質を考える上で重要な視点を提供するものとして、一定の評価を得ています。