サン・シモンの産業者の教理問答の価値
サン・シモンの思想における位置づけ
「産業者の教理問答」(Catéchisme des industriels)は、1823年から1824年にかけて、フランスの社会思想家アンリ・ド・サン＝シモンとその弟子たちによって執筆された著作です。これは、サン・シモンの晩年の思想、特に「産業主義」と呼ばれる思想を体系的に示した重要な著作として位置づけられます。
産業主義の中核思想
本書では、社会を「怠惰な階級」と「産業階級」に二分し、前者を聖職者や貴族、軍人、官僚など、後者を科学者、技術者、実業家、労働者などとしています。そして、社会進歩の原動力は産業階級の活動にあり、彼らが社会を指導すべきだと主張しました。
問答形式による構成
本書は、そのタイトルが示すように「問答形式」で書かれています。これは、サン・シモンの思想をより分かりやすく、一般大衆に広めるために用いられた手法でした。問答形式を用いることで、読者は自問自答しながら、サン・シモンの思想を理解していくことができます。
後世への影響
「産業者の教理問答」は、サン・シモン主義運動の教典的な役割を果たし、後の社会主義思想や社会改革運動に大きな影響を与えました。特に、実証主義を唱えたオーギュスト・コントや、サン・シモン主義から独自の協同組合思想を展開したフィリップ・ビュシェなど、多くの思想家に影響を与えました。