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ジスモンディの政治経済学新原理の発想

## ジスモンディの政治経済学新原理の発想

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ジスモンディの生きた時代背景

ジャン・シャルル・レオナール・シモンド・ド・シスモンディ(1773-1842)は、 激動の時代を生きた経済学者でした。彼は、フランス革命とナポレオン戦争、そしてその後の産業革命の開始を目の当たりにしました。これらの出来事は、彼に大きな影響を与え、従来の経済学に対する疑問を抱かせるきっかけとなりました。

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アダム・スミスへの批判的継承

ジスモンディは、アダム・スミスの『国富論』を深く研究し、当初はその自由主義経済学に共鳴していました。しかし、産業革命が進むにつれて、貧富の格差の拡大や労働者の窮状を目の当たりにし、スミスの理論に疑問を抱くようになります。

スミスは、市場メカニズムが自動的に社会全体の幸福を最大化すると考えていましたが、ジスモンディは現実の資本主義経済においては、市場の失敗が起こりやすく、政府の介入が必要であると主張しました。

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生産過剰と恐慌の問題

ジスモンディは、資本主義経済における**生産過剰**の問題に注目しました。彼は、資本家が無制限に利潤を追求すると、労働者の購買力を上回る過剰な商品が生産され、経済恐慌を引き起こすと考えました。

これは、スミスの唱える「セイの法則」(供給は自身の需要を創造する)を批判的に捉え、需要不足の可能性を明確に示した点で、画期的でした。

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分配の重視と国家の役割

ジスモンディは、経済学の中心課題は、富の**分配**であると考えました。彼は、生産された富が労働者にも分配されることで、需要が維持され、経済の安定が実現すると主張しました。

そのため、政府は、労働者の生活水準の向上や社会保障制度の整備などを通じて、積極的に分配に介入すべきであると説きました。

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「経済学新原理」の内容

これらの考えを体系化したのが、1819年に出版された『経済学新原理、または富が国民に分配される様式の考察』です。この著作の中でジスモンディは、従来の経済学が軽視してきた、以下の要素を重視しました。

* **歴史性**: 経済現象は、特定の歴史的・社会的文脈の中で理解されるべきである。
* **道徳性**: 経済活動は、単なる利潤追求ではなく、倫理的な観点からも評価されるべきである。
* **国家の役割**: 政府は、市場の失敗を修正し、社会正義を実現するために積極的に介入すべきである。

ジスモンディの思想は、その後の社会主義経済学や福祉国家論に大きな影響を与え、現代の資本主義経済における格差や環境問題を考える上でも重要な視点を提供しています。

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