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ゲーデルの不完全性定理の発想

## ゲーデルの不完全性定理の発想

### ゲーデルの不完全性定理とは何か?

ゲーデルの不完全性定理とは、数学者クルト・ゲーデルが1931年に証明した、数学の基礎に関する重要な定理です。大きく分けて以下の二つの定理から成り立ちます。

* **第一不完全性定理**: 自然数論を含む程度に強力な矛盾のない形式体系では、証明も反証もできない命題が必ず存在する。
* **第二不完全性定理**: 自然数論を含む程度に強力な矛盾のない形式体系では、その体系自身の無矛盾性を証明することができない。

### ゲーデルの発想の原点:数学基礎論の危機とヒルベルト・プログラム

20世紀初頭、数学の基礎を巡る議論が活発化していました。集合論のパラドックスの発見などは、数学の厳密な基盤に疑問を投げかけるものでした。こうした状況の中、ダフィット・ヒルベルトは、数学の無矛盾性と完全性を形式的な方法で証明することを目指す「ヒルベルト・プログラム」を提唱しました。ヒルベルトは、数学を記号の羅列として形式化し、その形式体系の中で、あらゆる真なる命題が証明できると信じていました。

### ゲーデルによる「自己言及のパラドックス」の導入

ゲーデルは、ヒルベルト・プログラムの目標達成が不可能であることを示すために、画期的な手法を編み出しました。それは、「自己言及のパラドックス」を数学の形式体系内部に持ち込むという方法です。

ゲーデルは、数論の命題を符号化し、各命題に一意の自然数を対応させる「ゲーデル数化」と呼ばれる方法を用いることで、形式体系自体とその内部で表現される命題との間に対応関係を築きました。

そして、この符号化を利用して、「この文は証明できない」という自己言及的な命題を形式体系内で表現することに成功しました。この命題が真であると仮定すると、形式体系内で証明できない真の命題が存在することになり、形式体系は完全ではありません。一方、この命題が偽であると仮定すると、形式体系内で証明できる偽の命題が存在することになり、形式体系は矛盾します。

### ゲーデルの不完全性定理の衝撃とその後

ゲーデルの不完全性定理は、ヒルベルト・プログラムの目標が達成不可能であることを示し、当時の数学界に大きな衝撃を与えました。この定理は、数学の形式体系には、その体系の外部から見れば真であるにもかかわらず、体系内部では証明できない命題が必ず存在することを意味しており、数学の完全性に対する限界を示したのです。

その後、ゲーデルの不完全性定理は、数学基礎論だけでなく、計算機科学、哲学、認知科学など、様々な分野に影響を与え続けています。

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