ジョイスのユリシーズの発想
ユリシーズとオデュッセイアの比較
ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』は、ホメーロスの叙事詩『オデュッセイア』の構造とテーマを借りて、20世紀初頭のダブリンの日常生活を描いています。各章は『オデュッセイア』の特定のエピソードに対応し、登場人物や出来事はホメーロスの登場人物や出来事を反映しています。例えば、『ユリシーズ』の主人公であるレオポルド・ブルームは、知恵と忍耐力で知られるオデュッセウスに対応しています。ブルームの妻モリーは、夫の帰りを待ち続ける忠実なペネロペに対応しています。また、若い詩人のスティーブン・デダルスは、オデュッセウスの息子テレマコスに対応しています。
ダブリンの写実的な描写
『ユリシーズ』は、ダブリンの街並みや人々の生活を細部まで克明に描写していることでも知られています。ジョイスは、登場人物たちの思考や感情、街の喧騒、パブでの会話など、あらゆるものを詳細に描写することで、当時のダブリンをありのままに描き出そうとしました。この写実的な描写は、自然主義文学の影響を受けていると考えられています。
意識の流れ
『ユリシーズ』の特徴の一つに、「意識の流れ」と呼ばれる手法を用いていることが挙げられます。これは、登場人物たちの思考や感情を、論理的な順序や文法にとらわれずに、そのまま描写する手法です。ジョイスは、この手法を用いることで、人間の意識の複雑さを表現しようとしました。