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デューイの経験と自然の評価

デューイの経験と自然の評価

経験と自然の関係性

ジョン・デューイの主著『経験と自然』(1925年)は、認識論、形而上学、芸術、価値論など、多岐にわたるテーマを網羅した、20世紀のプラグマティズム思想における記念碑的作品です。本書においてデューイは、伝統的な哲学が陥ってきた二元論 ― 経験と自然、主体と客体、心と身体などを切り離して考える考え方 ― を克服しようと試みました。

自然の再解釈:経験を含む連続体

デューイは、自然を人間の経験から切り離された、固定した不変の実体として捉えるのではなく、絶えず変化し、生成する過程、すなわち「経験の連続体」として捉え直しました。この考え方の根底には、ダーウィンの進化論の影響が見られます。自然は、生物が環境との相互作用を通じて適応し、進化していく動的な場として理解されます。

経験の再解釈:受動的なものではなく、能動的な相互作用

デューイは、経験についても、伝統的な認識論のように、受動的に感覚印象を受け取るだけのものとは考えませんでした。彼にとって経験とは、人間が生来備えている衝動や欲求に基づき、環境と能動的に相互作用し、その過程で世界を意味づけていく動的なプロセスです。この相互作用の中で、思考や言語、文化などの複雑な人間の営みも生まれてきます。

探求の道具としての論理と科学

デューイは、論理や科学も、絶対的な真理を明らかにする手段ではなく、人間の経験をより豊かに、問題解決を促進するための道具として位置づけました。重要なのは、抽象的な理論や概念ではなく、具体的な問題状況に根ざした探求です。彼は、この探求を通じて、経験は絶えず再構成され、新たな意味が創造されると考えました。

芸術と美的経験の重視

デューイは、芸術と美的経験を人間の経験の最も高度な形態として重視しました。芸術は、単なる娯楽ではなく、世界を新たな視点で見つめ直し、想像力を駆使して新たな意味や価値を創造する活動です。美的経験は、日常生活における問題や葛藤を一時的に超越した、統合された充実した経験であり、デューイの哲学において重要な位置を占めています。

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