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スミスの道徳感情論の構成

## スミスの道徳感情論の構成

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第一篇 道徳感情の原則について

第一篇では、人間の道徳的判断の起源と基礎を考察します。まず、人間には利己心だけでなく、他者の幸福に対する共感能力が備わっていることを論じます。そして、この共感能力こそが道徳感情の源泉であると主張します。

具体的には、まず第一章で「同情(sympathy)」の概念を導入し、私たちが他者の感情を理解し共有するメカニズムを説明します。続く第二章では、この同情に基づいて、私たちは他者の行為を是認したり非難したりするようになると論じます。

第三章では、自分自身の行為に対しても、あたかも公平な観察者の立場から判断する「想像上の公平な観察者(impartial spectator)」の概念を導入します。そして、この想像上の公平な観察者の視点を内面化することによって、私たちは道徳的に行動しようとすると主張します。

第四章では、道徳的判断における習慣や教育の影響について考察します。そして、第五章では、功利と正義の関係について論じます。

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第二篇 利己心の功徳について

第二篇では、人間の利己心と社会秩序の関係について考察します。スミスは、利己心は必ずしも悪徳ではなく、適切に抑制されれば、社会全体の幸福に貢献すると論じます。

第一章では、個人の努力が社会全体の利益につながるメカニズムを説明します。第二章では、社会秩序を維持するために必要な正義の原則について考察します。そして、第三章では、個人の自由を最大限に尊重する「自然の自由の体系」の重要性を説きます。

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第三篇 道徳の異なる体系の基礎について

第三篇では、過去の哲学者たちが提唱してきた様々な道徳体系を批判的に検討します。具体的には、第一章で利己主義を、第二章で功利主義を、そして第三章で徳倫理をそれぞれ批判します。

そして、これらの道徳体系の問題点を指摘した上で、スミス自身の道徳理論の優位性を主張します。

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第四篇 功徳を是認し推奨する諸感情について

第四篇では、人間の道徳感情を具体的な徳目と関連づけて考察します。第一章では、自分自身の利益に直接関わる徳として、「 prudence(慎重さ)」と「self-command(自制心)」を取り上げます。

第二章では、他者の利益に直接関わる徳として、「benevolence(慈悲)」と「justice(正義)」を論じます。そして、第三章では、これらの徳を支える「名誉」や「賞賛」といった感情の働きについて考察します。

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第五篇 収入について

第五篇では、道徳感情と経済活動の関係について論じます。具体的には、第一章で統治者の義務、第二章で収入の源泉、第三章で租税の性質についてそれぞれ考察します。

スミスは、経済活動においても道徳的な原則が重要であると論じます。例えば、政府は税制などを通じて社会全体の幸福を促進する義務を負うと主張します。

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第六篇 道徳哲学の体系について

第六篇では、これまでの議論を踏まえ、スミス自身の道徳哲学体系を提示します。第一章では、ストア派、エピクロス派、プラトン主義の道徳哲学を概観し、それぞれの長所と短所を分析します。

そして、第二章では、これらの哲学思想を踏まえつつ、スミス自身の道徳哲学体系を展開します。スミスは、人間の道徳感情は自己愛と共感の複雑な相互作用から生じるものであると主張します。

また、道徳的な行動は、単に理性的な計算に基づくのではなく、感情、習慣、社会規範など、様々な要因によって影響を受けると論じます。

## 補足

上記はあくまで『道徳感情論』の構成の概要であり、本書の内容は多岐にわたるため、ここで全てを網羅することはできません。詳細については、ぜひ本書を直接参照することをお勧めします。

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