## メンガーの国民経済学原理と時間
時間概念の重要性
カール・メンガーは、1871年に刊行された主著『国民経済学原理』において、経済現象を理解する上で時間の役割が不可欠であることを強調しました。彼は、人間の欲求とそれを満たすための手段との関係が時間的な次元を持つことを明確に示しました。
財の概念と時間
メンガーは、財を定義する上で、それが人間の欲求を満たす能力を持つだけでなく、その能力が現在だけでなく**未来にわたって**存在することが重要であると主張しました。 これは、財の価値が、その財が将来もたらすであろう満足に対する現在の評価に基づいているためです。
生産の時間構造
メンガーは、生産過程を、時間をかけて段階的に行われるプロセスとして捉えました。原材料から最終消費財が生産されるまでには、一定の時間が必要であり、各段階で労働や資本が投入されます。 この過程は、時間軸に沿って展開されるものであり、時間要素を考慮しなければ理解できません。
価値と時間選好
メンガーは、人々が将来の財よりも現在の財を好む傾向、すなわち**時間選好**を持つことを指摘しました。 これは、将来の財がもたらす満足は、現在の財がもたらす満足よりも割引かれて評価されることを意味します。
利子の発生
時間選好の存在が、利子の発生を説明する鍵となります。 人々は、現在の財を将来の財よりも高く評価するため、将来の財を借りる際には、利子という形でプレミアムを支払うことになります。 利子は、時間を犠牲することへの対価として発生するのです。