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プラトンのパイドンと人間

プラトンのパイドンと人間

ソクラテスの死と魂の不死

 パイドンは、プラトンの初期対話篇の一つであり、副題は「魂について」とつけられています。この対話篇は、ソクラテスの弟子パイドンが、ソクラテスの処刑の日に立ち会った時の様子を、エケイデモスの求めに応じて語ることによって構成されています。

 パイドンは、ソクラテスの死の場面を哲学的考察の場へと転換させます。ソクラテスは、死を肉体からの魂の解放と捉え、真の哲学者こそが死を歓迎すべき存在であると主張します。対話の中で、ソクラテスは魂の不死を論証するために、さまざまな議論を展開します。その中には、輪廻転生、想起説、反対物の存在などが含まれます。

 しかし、これらの議論は、決定的な証明を与えるものではなく、むしろさらなる疑問を提起するものとして機能しています。パイドンは、魂の不死という問題に対する容易な解答を与えるのではなく、読者に深い思索を促す作品といえるでしょう。

人間観への影響

 パイドンは、西洋思想史において、人間を肉体と魂からなる二元的な存在として捉える考え方に大きな影響を与えました。肉体と魂を分離し、魂をより高貴なものと捉える視点は、後のキリスト教神学にも受け継がれていきます。

 また、パイドンは、哲学という営み自体を、死への準備、すなわち魂を肉体という牢獄から解放するための実践として位置づけています。この哲学観は、後世の哲学者たちに多大な影響を与え、哲学が人生の指針となる可能性を示唆しました。

 パイドンは、ソクラテスの死という劇的な出来事を題材としながら、魂の不死、哲学の意義、そして人間存在の本質といった普遍的な問題を提起する作品です。そして、これらの問題は、現代を生きる私たちにとっても、依然として重要な意味を持ち続けています。

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