ケルゼンの自然法論と法実証主義からの学び
自然法論と法実証主義の対立
ケルゼンは、著書『純粋法学』において、法実証主義の立場から自然法論を批判しました。彼は、自然法論が法と道徳を混同していると主張し、法の客観性と自律性を強調しました。
自然法論は、法は人間の理性や神意など、何らかの超越的な秩序に由来すると考えます。そのため、法は道徳と密接に結びついており、不正な法は法として認められないとされます。
一方、法実証主義は、法は人間の制定行為によってのみ成立すると考えます。そのため、法と道徳は明確に区別され、たとえ道徳的に問題があっても、制定された以上は法として有効とされます。
ケルゼンの批判と純粋法学
ケルゼンは、自然法論が「事実」と「規範」を混同していると批判しました。自然法論は、自然や神といった「事実」から法という「規範」を導き出そうとしますが、これは論理的に不可能であると彼は主張しました。
ケルゼンは、法を道徳や政治などの他の要素から分離し、純粋な法の体系を構築しようとしました。これが「純粋法学」と呼ばれるものです。純粋法学においては、法は「規範」の体系として捉えられ、その妥当性は上位の規範との整合性によってのみ判断されます。
ケルゼンの影響
ケルゼンの法哲学は、20世紀の法思想に大きな影響を与えました。彼の純粋法学は、法の客観性と自律性を強調することで、法学を他の社会科学から独立した学問分野として確立することに貢献しました。
しかし、ケルゼンの思想は、その抽象性や形式主義的な性格から批判されることもあります。特に、ナチス政権下における彼の立場は、法実証主義の限界を露呈するものとして議論の的となっています。
ケルゼンの思想は、現代の法哲学においても重要な論点を提供し続けています。