## ダーウィンの種の起源の思考の枠組み
ダーウィンが着目した自然界の事象
ダーウィンは「種の起源」において、自然界の様々な事象から進化論の構築を行いました。彼が特に着目したのは以下の3点です。
* **生物の地理的分布**：同じような環境に生息する生物でも、地域が異なると形態や習性が異なる場合があることにダーウィンは注目しました。例えば、ガラパゴス諸島のフィンチは、島ごとにくちばしの形が異なっており、それぞれの環境に適応した進化を遂げたと考えられます。
* **化石記録**：ダーウィンは、化石記録から、生物が長い時間をかけて変化してきたことを示す証拠を得ました。古い地層から発見される化石は、現存する生物とは異なる形態を持つものが多く、進化の過程を示唆しています。
* **人工選択**：ダーウィンは、人間が家畜や農作物を改良するために、意図的に特定の形質を持つ個体を選抜して交配させる「人工選択」に着目しました。彼は、自然界においても、生存と繁殖に有利な形質を持つ個体が、より多くの子孫を残すことで、種が変化していく可能性を考えました。
自然選択説の提唱
ダーウィンは、上記のような観察と考察から、「自然選択説」を提唱しました。自然選択説は、以下の5つの要素から成り立っています。
1. **変異**：同じ種の個体間には、形態、生理機能、行動などの様々な形質に変異が存在します。
2. **遺伝**：親の形質は、子に受け継がれます。
3. **生存競争**：生物は、限られた資源を巡って、他の生物と生存競争を繰り広げています。
4. **適応度**：変異の中には、生存競争において有利に働くものもあれば、不利に働くものもあります。有利な変異を持つ個体は、そうでない個体よりも、生存し、子孫を残す可能性が高くなります。これを「適応度が高い」といいます。
5. **進化**：適応度の高い個体が、より多くの子孫を残すことで、有利な変異が集団内に広がっていきます。長い時間をかけて、このプロセスが繰り返されることで、種は変化し、進化すると考えられます。
種の分岐と共通祖先
ダーウィンは、自然選択によって、一つの種が複数の種に分岐していくと考えました。異なる環境に隔離された集団では、それぞれの環境に適応した異なる変異が蓄積されていきます。やがて、これらの集団間の差異が大きくなり、互いに交配できなくなるまでになると、別の種として分岐したとみなされます。
ダーウィンは、すべての生物は、共通の祖先から、長い時間をかけて、自然選択によって分岐し、進化してきたと考えていました。彼は、生物の系統関係を、枝分かれしていく樹木にたとえ、「生命の樹」と表現しました。