## プラトンの「ティマイオス」とアートとの関係
ミメーシス(模倣)の問題
「ティマイオス」において、プラトンは宇宙と人間の創造についての仮説を展開します。この中で、彼はイデアの世界と感覚的世界という二つの領域を提示します。イデアの世界は永遠不変の真実であり、感覚的世界はイデアの不完全な模倣として存在します。アートはこの文脈において、感覚的世界の模倣、つまりイデアの模倣の模倣として位置づけられます。
プラトンはこのようなアートのあり方を批判的に捉えています。なぜなら、アートはイデアから二重に離れており、真実から私たちを遠ざけると考えたからです。彼は、絵画や彫刻といった視覚芸術が、私たちの感情に訴えかけ、理性的な判断を曇らせると主張しました。
創造神デミウルゴスとアート
「ティマイオス」では、デミウルゴスという神がイデアを模倣して世界を創造したとされます。デミウルゴスは善なる職人であり、可能な限り完璧な世界を創ろうとしました。
このことから、アートはデミウルゴスの創造行為と比較されることがあります。しかし、プラトンは人間によるアートの創造を、デミウルゴスのそれと明確に区別しています。デミウルゴスの創造は善に基づくものであり、完璧を目指していますが、人間の創造は不完全な模倣に基づくものであり、真実に到達することはできません。
音楽と調和
「ティマイオス」では、音楽は宇宙の調和を反映するものとして重要な位置を占めています。プラトンは、宇宙の秩序と美は、数学的な比率と調和によって成り立っていると考えていました。そして、音楽もまた、音程やリズムといった数学的な原理に基づいて構成されているため、宇宙の調和を表現することができるとされました。
プラトンは、適切な音楽は人間の魂を教育し、理性と感情のバランスを整えることができると考えていました。しかし、不適切な音楽は、逆に魂を堕落させ、無秩序を生み出す可能性があると警告しています。