## ホジスキンの労働擁護論に関連する歴史上の事件
労働者階級の窮状
トーマス・ホジスキン(1787-1869)は、イギリスの政治経済学者であり、初期の社会主義思想家の一人として、労働者階級の権利擁護に生涯を捧げました。産業革命の渦中、ホジスキンは資本主義の矛盾と労働者階級の窮状を目の当たりにしました。工場では長時間労働、劣悪な労働環境、児童労働が横行し、労働者たちは貧困と病気にあえいでいました。このような状況を目の当たりにしたホジスキンは、既存の経済体制に疑問を抱き、労働者の権利と生活水準の向上を目指した社会改革の必要性を痛感するようになりました。
リカード派経済学からの決別と労働価値説
ホジスキンは当初、デヴィッド・リカードの経済学に共鳴していました。しかし、リカードが唱える地代論や賃金基金説など、労働者階級にとって不利な理論に疑問を抱くようになり、次第にリカード派経済学から距離を置くようになりました。そして、アダム・スミスの労働価値説を継承し、商品の価値はそれを生産するために投下された労働量によって決まると主張しました。この主張は、当時の資本主義社会において、労働者が生産の担い手であるにも関わらず、資本家に搾取されているというホジスキンの認識に基づいていました。
ロンドン機械破壊運動
19世紀初頭、イギリスでは産業革命の進展に伴い、機械化による失業への労働者の不安が高まりました。1811年から1817年にかけて、ラッダイト運動として知られる機械破壊運動がイギリス各地で展開されました。熟練工を中心に組織された労働者たちは、自分たちの仕事を奪う存在として機械を破壊し、政府に雇用保護を求めました。ホジスキンは、ラッダイト運動の暴力的な側面を批判しつつも、その背景にある労働者の不安と怒りに共感を示しました。彼は、機械化自体を否定するのではなく、技術革新の恩恵が労働者に還元されるべきだと主張し、社会全体の利益のために技術進歩を活用する必要性を訴えました。
協同組合運動と社会改革への取り組み
ホジスキンは、労働者自身が生産手段を所有し、経営にも参加する協同組合こそが、資本主義の矛盾を克服し、労働者階級の社会的地位向上を実現する手段であると考えました。彼は、労働者による協同組合の設立を支援し、その普及に尽力しました。また、教育の普及による労働者の意識改革や、選挙制度改革による労働者の政治参加の拡大など、様々な社会改革を提唱しました。ホジスキンは、社会主義思想の先駆者として、労働者の権利と福祉の向上を目指し、後の社会主義運動や労働運動に大きな影響を与えました。彼の思想は、資本主義の矛盾が顕在化した19世紀のイギリス社会において、労働者階級の希望となり、社会正義の実現に向けて闘うための理論的支柱となりました。