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プルーストの失われた時を求めてに関連する歴史上の事件

プルーストの失われた時を求めてに関連する歴史上の事件

第一次世界大戦

マルセル・プルーストが『失われた時を求めて』を執筆していた時期は、ヨーロッパ史において最も激動の時代の一つと重なります。1914年に勃発した第一次世界大戦は、それまでの社会構造、価値観、人々の生活様式を根底から覆すものでした。プルースト自身は徴兵を免除されましたが、戦争の影響から逃れることはできませんでした。多くの友人が戦場へ赴き、中には二度と戻らないものもいました。戦争の悲惨な現実は、プルーストの作品にも影を落とし、『失われた時を求めて』の後半部分では、戦時下のパリの描写や、戦争が人々の心理に及ぼす影響が克明に描かれています。

例えば、作品に登場する社交界は、戦争によってその華やかさを失い、登場人物たちは戦争の影に怯えながら日々を過ごしています。また、主人公である「私」の愛するアルベルチーヌは、戦時中に不可解な死を遂げますが、これも戦争の狂気がもたらした悲劇として解釈することができます。

ドレフュス事件

1894年にフランスで起きたドレフュス事件も、『失われた時を求めて』に大きな影響を与えた歴史的事件です。ユダヤ人であるアルフレッド・ドレフュス大尉が、ドイツへのスパイ容疑で冤罪をかけられたこの事件は、フランス社会を二分する大きな論争を巻き起こしました。プルースト自身も、ドレフュスを擁護する立場から積極的にこの事件に関与し、知識人や芸術家たちの間でドレフュスの無罪を訴える運動に参加しました。

『失われた時を求めて』では、ドレフュス事件を直接的に描いた場面はありませんが、事件がフランス社会に突きつけた反ユダヤ主義や、社会正義、真実とは何かといった問題意識は、作品全体を貫く重要なテーマとなっています。例えば、主人公「私」を取り巻く上流社会の人々の間には、反ユダヤ主義的な言動が見受けられ、そうした社会の欺瞞や偽善に対する「私」の嫌悪感は、ドレフュス事件に対するプルースト自身の思いと重なります。

また、プルーストは、ドレフュス事件を通じて、人間の記憶や証言の不確かさ、真実の多義性といった問題を改めて認識したと言われています。『失われた時を求めて』において、記憶と時間、そして現実と虚構の関係が複雑に織りなされているのも、ドレフュス事件の経験と無縁ではないと言えるでしょう。

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