Skip to content Skip to footer

ラシーヌのフェードルに影響を与えた本

ラシーヌのフェードルに影響を与えた本

エウリピデスの『ヒッポリュトス』

ジャン・ラシーヌの傑作悲劇『フェードル』(1677年)は、古代ギリシャの劇作家、特にエウリピデスの作品に大きく依拠しています。中でもエウリピデスの『ヒッポリュトス』(紀元前428年)は、ラシーヌの劇に最も直接的な影響を与え、物語の骨格と主題を形作りました。このギリシャ悲劇は、継母フェードラと継息子ヒッポリュトスとの間の禁断の愛と、その後の破滅を描いています。ラシーヌはこの古典的な物語を取り上げ、洗練された詩、心理学的探求、そして17世紀フランスの趣味に合わせた変更を加え、独自のものにしました。

ラシーヌ版『フェードル』へのエウリピデスの影響は、両作品のプロットの類似性において最も顕著です。どちらの劇も、ヒッポリュトスを密かに愛するフェードラという中心的な前提を共有しており、その愛は義理の息子であるために禁じられています。フェードラの情熱は、エウリピデスの原作とラシーヌの改作の両方で、女神アフロディーテ(ラシーヌではヴィーナス)の怒りによって引き起こされます。どちらの作品においても、フェードラは当初、禁断の欲望を隠そうとしますが、最終的には乳母のオイノーネ(ラシーヌでは同じ名前)に告白します。オイノーネの説得で、エウリピデスの劇ではフェードラ自身が、ラシーヌの劇ではオイノーネが、ヒッポリュトスにフェードラの愛を告白します。

両方のバージョンにおいて、ヒッポリュトスはこの申し出に恐れを抱き、拒絶します。激怒して辱められたフェードラは、ヒッポリュトスが自分を誘惑したと夫のテセウスに告発して、復讐します。テセウスはヒッポリュトスを呪い、海の神ポセイドンに彼を殺すように頼みます。ヒッポリュトスは亡くなり、フェードラは自分の欺瞞を告白し、悔恨の念に駆られて自殺します。

これらの物語上の類似点にもかかわらず、ラシーヌはギリシャの原典を大幅に改変し、独自の解釈と劇的な重点を置いています。例えば、ラシーヌはフェードラの性格を深め、心理的により複雑にしました。エウリピデスのフェードラは、やや受動的で、自分の欲望に支配されているように見えますが、ラシーヌのフェードラはより内省的で、葛藤を抱えています。彼女は自分の感情に恐怖を感じ、罪悪感に苛まれ、絶えず自分の行動を正当化しようとします。これは、彼女の有名な冒頭のモノローグ「Mon cœur est plein d’horreurs qu’il n’ose exprimer」で明らかです。このモノローグでは、彼女は自らの禁断の情熱に恐れおののいています。

さらにラシーヌは、ギリシャの運命と宿命という概念を、17世紀の観客がより共感しやすいように、キリスト教の罪と罪悪感という概念に置き換えています。ラシーヌのフェードラは、単に神々の遊び道具ではなく、自分の欲望と、神々、特にヴィーナスに課せられた遺伝的な呪いによって引き裂かれた女性なのです。彼女は自分の家族を苦しめた罪深い情熱の系譜の犠牲者であると考えており、これが彼女の性格に苦悩と葛藤の要素を加えています。

さらに、ラシーヌは登場人物間の関係性、特にフェードラとオイノーネの関係性に微妙な変更を加えています。エウリピデスの劇では、オイノーネは主に自分の女主人の命令に従う従順な召使いです。しかし、ラシーヌはオイノーネの役割を、より積極的で操作的な共謀者へと拡大しました。フェードラの告白者、腹心、そして最終的には自分の破滅をもたらす計画の立案者であるオイノーネは、主人公の道徳的闘争を体現しています。ラシーヌはオイノーネの性格を通して、情熱の危険性と、人間の判断に与える壊滅的な影響を探求しています。

これらの具体的な変更に加えて、ラシーヌはエウリピデスの原典を再解釈し、洗練された心理学的リアリズムと道徳的複雑さを劇に吹き込みました。彼はギリシャのコーラスの役割を最小限に抑え、代わりに登場人物の内面の葛藤と動機に焦点を当てています。ラシーヌの登場人物の言葉は、劇的な行動を進めるだけでなく、隠された考え、感情、闘争を明らかにする複雑な心理的肖像画にもなっています。

結論として、ラシーヌの『フェードル』は、エウリピデスの『ヒッポリュトス』の深淵な再解釈であり、ギリシャの原典から物語の骨格と主題のインスピレーションを得ています。しかし、ラシーヌは劇に独自の特徴的な変更を加え、登場人物、特にフェードラの性格を深め、キリスト教の罪と罪悪感の概念を探求し、洗練された心理学的リアリズムを注入しました。その結果、登場人物、主題、言語の永続的な力により、後の世紀に劇作家や観客を魅了し続けてきた、時を超えた傑作が誕生したのです。

Amazonで購入する

Leave a comment

0.0/5