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スタンダールの赤と黒が扱う社会問題

スタンダールの赤と黒が扱う社会問題

復讐心と野心

 主人公ジュリアン・ソレルの行動原理は、自身の置かれた社会的境遇からくる抑圧と、そこから抜け出したいという野心、そして彼を見下し、不当に扱ったと感じる上流階級への復讐心です。彼は、立身出世の手段として教会と軍隊という当時の二大勢力の間で揺れ動きます。これは、当時のフランス社会における階級の固定性と、個人の才能や努力よりも家柄やコネが重視される風潮を反映しています。

 ソレルは、生まれながらにして高い知性と教養を持ち合わせていますが、貧しい家に生まれたがゆえに、社会的地位も人々からの敬意も得られずにいます。このジレンマが、彼を自己嫌悪や周囲への憎悪へと駆り立て、それがやがては破滅的な行動へと繋がっていきます。

恋愛と階級

 小説では、ソレルと二人の女性、レナール夫人とマチルドとの恋愛が描かれます。レナール夫人との恋愛は、退屈な地方都市での生活に倦んでいた彼女にとって、若く情熱的なソレルとの関係は、一種の刺激であり、現実逃避でした。一方、貴族の娘であるマチルドは、ソレルの知性と野心に惹かれ、彼との恋愛を一種の冒険として楽しみます。

 しかし、どちらの恋愛も、身分の違いという壁に阻まれます。ソレルにとって、彼女たちとの恋愛は、上流社会への階段を駆け上がるための手段でもありました。彼の恋愛には、純粋な愛情だけでなく、計算高さや野心も見え隠れします。これは、当時の社会において、結婚が個人の感情よりも家柄や経済状況によって決められることが多かったという現実を反映しています。

宗教と偽善

 ソレルは、出世のために神学校に入学し、聖職者を目指します。彼は信仰心からではなく、立身出世のための手段として宗教を利用します。当時の教会は、政治や社会に大きな影響力を持つ権力機構の一つであり、聖職者は社会的地位と経済的な安定を保証されていました。

 小説では、教会内の腐敗や聖職者たちの偽善が描かれています。ソレルは、自身の野心のために宗教を利用しながらも、心の底では教会の偽善を軽蔑しています。これは、フランス革命後も依然として社会に大きな影響力を持つ教会に対する、スタンダールの批判的な視点を反映しています。

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