デカルトの省察を読む前に
デカルトの生涯と時代背景を知る
「我思う、ゆえに我あり」で有名なルネ・デカルトは、16世紀末から17世紀前半に生きたフランスの哲学者、数学者です。彼の思想は、それまでのスコラ哲学に支配されていた西洋思想界に大きな変革をもたらしました。デカルトが生きた時代は、宗教改革や三十年戦争など、ヨーロッパ社会が大きく揺れ動いていた時代でもありました。
デカルトの哲学を深く理解するためには、彼自身の生きた時代背景や、当時の社会状況、思想的潮流などを知ることが重要となります。例えば、宗教改革によってカトリック教会の権威が失墜していく中で、デカルトは新たな真理の拠り所を求めていました。
デカルト哲学のキーワードを押さえる
デカルト哲学を理解する上で重要なキーワードは、「方法的懐疑」「我思う、ゆえに我あり」「心身二元論」などです。
「方法的懐疑」とは、あらゆる知識を疑うことから哲学的探求を始めるというデカルト独自の思考方法です。感覚や伝統的な権威を疑い、絶対に確実な真理だけを土台にして哲学体系を構築しようとしたのです。
「我思う、ゆえに我あり」は、デカルトが方法的懐疑を通じて到達した、絶対に確実な真理です。 我々が思考しているという事実そのものは疑いようがなく、そこから「考える主体としての我」の存在が証明されるとしました。
「心身二元論」は、人間を「精神」と「身体」という二つの実体から成り立つものとする考え方です。 デカルトは、身体は物質であり機械論的に理解できるとしつつも、精神は非物質的なものであり、自由意志を持つと考えました。
『省察』が書かれた背景と目的を理解する
『省察』は、デカルトが自身の哲学体系を体系的にまとめた著作ではなく、6日間におわたる瞑想を記録したという形式をとっています。これは、当時の学術界の慣習や、宗教的な批判を避けるためでもありました。
デカルトは、『省察』において、読者自身が彼と同じように思考を巡らせ、真理へと至ることを期待していました。そのため、『省察』は難解な部分もありますが、読者自身の頭で考え、理解を深めていくことが重要となります。